動物たちと過ごす時間は“幸せのおこぼれ”を貰っているのと同じ」
Photo : KYOHEI NAGANO
By AMO2022/08/12
近年、ペットを飼う際は保護犬・保護猫を迎え入れる人が増えており、動物愛護に向けての取り組みがだんだん増えてきている印象。しかし、それでも営利目的で動物を大量に繁殖させる“パピーミル”や殺処分といった問題の闇はまだまだ深い。今回は、プライベートでも猫と小鳥を飼っているという動物愛にあふれた俳優・池田エライザさんにインタビュー。池田さんが考える「動物と人間が幸せに共生する社会」の実現に必要なこと、やめるべきこととは? 2022年8月19日(金)に公開となる映画『ハウ』の主役で俳優犬、ベック君とのキュートなツーショットも必見!
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――池田さんにとって動物はどういう存在?
人生の相棒であり、絶対にお別れできないパートナーですね。よく、ペットに関して“主従関係”という言葉を耳にしますが、私はうちの子たちにとって、ときにパートナーであり、ときに母であり、ときに下僕でもあります(笑)。状況に合わせて立場を変えながら、適切な関係を築いています。
私は、動物は人間よりもピュアな生き物だと思っていて、彼ら・彼女らに対しては常に自分のことを見透かされていると思いながら、純度100%の気持ちで接するようにしています。
また、彼・彼女たちを幸せにすることによって、自分も幸せなれるので、動物たちと過ごす時間は“幸せのおこぼれ”を貰っているのと同じだと思っています。
愛猫との出会いが動物問題について考えるきっかけに
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――近年ペットを飼うことを考える際に、保護犬・保護猫を家族に迎え入れる人も増えてきていますね。
保護犬・保護猫を家族として迎え入れることに対して、私はものすごく賛成です。私は、“パピーミル”について調べたことがあるのですが、こういった現状やペットショップという形式について、もう本当に変えなければいけないと思います。その決定打となったのが、わたしの家族である猫との出会いです。
もともと、ペットショップで新たに家族をお迎えするつもりはなかったのですが、飼っている鳥の餌を買いにペットショップに行ったとき、売れ残ってしまった猫があまりにも小さなゲージに入れられ、ぐったりしている光景が忘れられませんでした。これが、うちの子との出会いです。お店の方によれば、人見知りであるが故に売れ残ってしまったらしく、その日から猫のことが気になって、連日ペットショップに行っては、様子を見ていました。
ペットショップにお金を落としていいのか?という葛藤がありつつも、ある日猫の値段が半額にまで下げられていることに気づいて、「これはもう見過ごせないな」となってお迎えしました。
――その後はどうなったのでしょうか?
実際に一緒に暮らし始めてみたところ、“猫伝染性腹膜炎(FIP)”という難病を患っていることが発覚。どうしていいかわからず、お迎えしたペットショップに問い合わせたところ、「同額の猫と交換できますが、どうしますか?」と言われ、すごくショックを受けました。「今世の中で、このように命が軽く扱われていることが起きているのか」と、今までの自分のなかの常識が崩れましたね。
それから、自分なりに何か動物たちを救うことに協力できればと思い、近所のシェルターに差し入れを持っていったり、お手伝いしたり、猫ちゃんたちの様子を見に行っています。
コロナ渦で無責任に動物を飼い始める人が増えているなか、こういった保護犬・保護猫との出会いは、人と人との繋がりも感じるし、見て見ぬふりをされてしまいそうになっていた命が誰かのもとで大事にされていくということが、すごく嬉しいです。
動物たちを“可愛くて従順な生き物”だと思わないことが大事
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――世の中には動物を飼う=ペットショップという方法しか知らない人もまだまだいるかと思います。1匹でも多くの動物が救われるための情報を広めていくためには、どうすれば良いですか?
気付いた人たちから行動を起こすしかないと思います。あとは、世の中のシステムを変える権力を持った人たちが、動物愛護と向き合うこと。
私たちのような発信力や影響力を持った立場のなかには、自分ができる範囲で精一杯、動物愛護について取り組んでいる人がたくさんいると思いますが、やはりどうしてもできることに限界があると思うんです。
例えば、ペットショップというシステムを廃止するにしても、そこで働いている人たちの給料はどうなるのか?とか、保護犬・保護猫を迎える際の審査基準とか、そういった部分は私たちのような立場が決断できることではない。だからこそ、そういったシステムや方式を作っていく権力者たちが、この問題について真剣に向き合ってほしいです。
私も、より多くの動物たちが幸せに暮らしていける、人間と共生していける世の中に変わっていくよう、これからも出来る限りのことをし続けたいし、自分の立場から伝えられることを明確に伝えていきたいですね。
――では、人間と動物が共に幸せに暮らせる社会にするには、どんなことが必要?
まずは、動物を“従順で可愛い生き物”、“いつだって自分に応えてくれる癒しの存在”だと思うのをやめること。彼・彼女たちにも人間と同じように感情があるので、パートナーと接する気持ちで向き合うべきだと思っています。
家族として迎え入れたからには、10年から20年といわれている彼・彼女たちの生涯のなかで、限りなく尽くして、幸せいっぱいになってもらって、来世もまた私の元に来たいと思ってもらえるようにしたいです。
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――8月19日に公開される映画『ハウ』は、動物と人間の絆がテーマの作品ですが、最初に、脚本を読んだ感想を教えて!
私の家族である猫がちょうど映画と同じような状況だったので、そのタイミングでこの作品に出会えたことがすごく不思議で運命的なものを感じました。脚本を読んで、「自分が誰よりも“足立桃子”というキャラクターに寄り添えるのでないか」と思いましたね。
また、主人公の民夫とハウの優しすぎる感情が豊かに描かれていて、共感できる部分もあれば、自分はこういう風にはできないなと思わされる部分もあって、すごく自分自身を顧みさせてくれる作品だと感じました。
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――撮影で心に残ったエピソードは?
ペットロスに苦しむ民夫が「新しい子を飼えば?」という言葉をかけられるシーンが、印象に残っています。
きっと、この言葉に悪気はないと思うのですが、何にも代えられない家族を失ったときにこんな言葉をかけられたら、悔しいなあと思いました。
ペットロスとどういう風に向き合うかは人それぞれですが、やはり長い間悲しみが伴うじゃないですか。でも、人生は続いていくから前を向かなきゃいけないわけで、どのようにこういった悲しみを整理すればいいかわからず、苦しんでいる人もいると思うんです。
でも、動物と過ごしたことがない人からすれば、こういった悲しみや苦しみについて全て理解できないときもあるだろうし、だからこそ、このシーンの撮影の時にそばで見ながら「そういう人もいるよなあ、でも悔しいよなあ」という感情になりましたね。
――池田さんは主人公・民夫を支える同僚の足立桃子役を演じられましたが、ご自身と桃子の共通点や桃子に共感することは?
家族である猫の境遇がこの作品と重なる部分があったので共感しかしていません(笑)。役作りなども特にせずにありのまま、感じたままに演じました。“私の延長線上に桃子がある“といった感じです。監督にもうちの猫のことを話していたので、私が思うままに演じさせてくださって、撮影現場もすごく居心地がよかったです。映画館で観てくださったら、この穏やかで和やかな空気を感じていただけると思います!
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――ハウ役のベックくんはいかがでしたか?
ベックくんには心が癒されると同時に、本当に天才役者だなぁと感心させられました。私は、現場であまりベックくんにお会いしていなかったのですが、作品を観たときに「ウソでしょ⁉」ってくらい、ものすごくいい表情をするんです。また、存在自体がピュアで、まっすぐで、美しくて……同じ役者として羨ましく思いますね。自分もそんな風になりたいです。あの大きな体のすみずみに愛情がぎっしり詰まっていると思います!
――池田さんがこの作品を通して伝えたいこととは? また、映画を観てどんなことを感じてほしいですか?
みなさんと同じ時代を生きていくなかで、きっとまともな神経じゃ生きていけないときや、どこか自分の感受性を否定しながら生きているときがあるんだろうなと感じています。
だからこそ、劇場に足を運んでこのハウと民夫が紡ぎ出す優しさに触れてほしいですし、そのときは綺麗な涙が出ると思います。
そして、映画を観終わったときに「こんな涙を流せる自分って心が綺麗だなあ!」と自分自身を褒めてあげてください。きっと、ハウがみなさんのOFFにしていた感受性のスイッチを再びONにしてくれると思います!
――最後に、エル・ガール読者に一言お願いします。
みなさんはもう十分イケてるので、自分のことを労わって大切にしてあげてください。
ここまで生きてきた自分を「えらい」、「かっこいい」「最高」と褒めてあげて、ときには「一回休もう!」となっても良いと思います。そして、ぜひ、映画『ハウ』を観に来てください!
エル・ガールの公式TikTokでは、ベックくんのキュートな動画や池田さんとのビハインドザシーンを公開中。TikTokをフォローしてぜひチェックして!
【PROFILE】
池田エライザ(いけだ えらいざ)
1996年4月16日生まれ。福岡県出身。 2009年に「ニコラモデルオーディション」でグランプリを受賞。近年の出演作品に『ルームロンダリング』(18/片桐健滋監督)、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18/大根仁監督)、『賭ケグルイ』(19/英勉監督)、『貞子』主演(19/中田秀夫監督)、『一度死んでみた』(20/浜崎慎治監督)、Netflixドラマ「FOLLOWERS」(20/蜷川実花監督)、『騙し絵の牙』(21/吉田大八監督)、『真夜中乙女戦争』(22/二宮健監督)など。