安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。
1919年から続く「シトロエン」。創業者アンドレ・シトロエンの「暮らしを豊かにするクルマづくりの鍵は『独創と革新』にある」という思いを大切にし、五感を刺激するようなクルマを造り続けています。そんなシトロエンの個性あふれる革新的な技術の中でも、ひときわ有名なのが「ハイドロニューマチック」。登場当時、業界が衝撃を受けた、「ハイドロニューマチック」の機構と歴史、魅力をご紹介します。
■発表後45分で750台を売り上げるほど画期的だったシステム
1955年のパリモーターショーでお披露目された、「シトロエンDS」。美しい造形のボンネットとフロントフェンダー、後端に向かってゆったりと傾斜していくルーフラインや、後輪の半分を覆うボトムラインなど、まるでSFの世界から抜け出してきたような個性的なルックスで、見るものに衝撃を与えました。
インテリアも、1本スポークの個性的なステアリング、直線と曲線が見事に融合した革新的なインパネデザイン、ペダルではなくゴム製の丸いスイッチのようなブレーキなど、かなり前衛的なものでしたが、それらデザイン以上に注目を集めたのが、「ハイドロニューマチック・サスペンション」というシステムの搭載でした。
「ハイドロニューマチック・サスペンション」は、従来の金属バネではなく、窒素ガスと専用オイルを使用したサスペンションシステム。安定した車両姿勢と快適な乗り心地が得られる、当時としては画期的すぎるメカニズムで、これによってDSは、発表からわずか45分で750台、1日で1万2000台、ショーの終了までに約8万台という売り上げを記録したそうです。