親指、中指、薬指は閉じ、人差し指と小指は半曲がり。それが顔のように見える“FiNGA(フィンガ)”というキャラクターが『表参道ヒルズ スペース オー』に出現。果たして、このアートを作ったのはいったい誰だ?
これはキース・ヘリング(Keith Haring)が行ったストリート&グラフィティ・アート運動のちょっとした再来? いやいや、絵画に関しては、その作品が常に物議を醸した20世紀の巨匠 フィリップ・ガストン(Philip Guston)のようでもあるぞ?
何を隠そう、このアートを生み出したのは、Kis-My-Ft2の千賀健永である。いま『表参道ヒルズ』B3の『スペース オー』では、千賀による立体造形のアートや、デジタルドローイング、キャンバス作品など、全110点以上を一堂に、そして堂々と展示している。この“FiNGAiSM”展の会場に入ると、まずオリジナル・キャラクターである“FiNGA”なる立体フィギュアが64体鎮座。さらに奥へ進むと、そのFiNGAがビックサイズとなり、人間らしさ丸出しのポーズで迎えてくれる。
これらのFiNGAは、ひとつひとつに個性があり、迫力があり、愛嬌がある。キャリアを積んだアーティストの大作個展のようでもあるが、作品はすべて、千賀健永が忙しいスケジュールの合間を縫って制作したもの。休憩中や待機中に、ロケバスの中でiPadを駆使して考案したものも多い。いろいろあるアイドルゆえの苦悩や葛藤が、きっとぶつけられている。
『Hypebeast』編集部は、そんな彼にインタビューの機会を得た。
Maciej Kucia/Hypebeast
Hypebeast:アートを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
千賀健永:実は……僕は、母親から褒められた記憶が薄くて。母からはいつも「一番を取りなさい」とアドバイスされて、とりあえずずっとダンスに励んできた。そんな風に生きてきたから、誰かに褒められたい、好かれたいというような、他人からのリアクションを意識した気持ちがむしろ強かった。でも、20代後半に絵に目覚めて、そういう感情から解き放たれる瞬間があったんです。線を描いているときは、この線は自分が好きなように描いていいんだよね、って。つまり、本当の自分と対話する。そうやっていくうちに、絵がどんどん好きになって、今までと違った人生の進め方を見つけました。それがアートとなって、ついに個展 “FiNGAiSM”にまで発展したというわけです。そしてこの個展は、自分のアートを評価されたいという気持ちよりも、今度は自分がつくったアートを好きになってもらいたい、というような新たな自分の欲求が生まれています。
このFiNGAは、千賀さんのヴィジュアル言語であり、アバターでもある?
まさにそうですね。今回の個展は、千賀健永という自分の存在より、むしろ自分が生み出したアート=FiNGAに注目してもらいたい。そして、彼が独立して愛される存在になってほしい。もうひとりの自分と言っても過言ではありません。それぐらい愛情込めて制作しました。
それにしても初めての展示会とは思えないような充実のラインアップです。制作過程で、なにかブーストのようなものがかかったりしたのでしょうか?
まず、表参道ヒルズで個展を開催することが先に決まったんです。作風は他にもパターンがあるんですが、(原宿にほど近い)表参道ヒルズならポップアートをやろう、と。だからキャラクターを作ろうって。そうすると、スニーカーを履かせるべきだ、とか、服はどういうのがいいか、とか。つまり、開催場所と日程が決まってから、制作したんですよ。でも、通常のコンサートでも、その場所をイメージしながら踊りと歌を頑張るし、この過程は僕にとっては不思議ではないです。その場所にくるお客さんをイメージしたり、その土地柄のこととか、空間の雰囲気とか、あらゆることを想像しながら、その度に浮かぶ発想を連鎖して考える時間が、何より好きだったりします。
象徴の“FiNGA”は、なぜかお腹が出ていますが?
あれは、自分自身の分身のつもりなんですよ(笑)。僕もお腹が出ていて(注:そうは見えない)。TVを観ながら、ポテトチップスを食べる時間って一番みっともないけど、一番、人間っぽくもあるじゃないですか。そして、愛嬌がある! それを描きたかったんです。いろんな人に見てもらいたいので、Hypebeastを日々チェックしている人にもぜひ見に来てほしいです。
アイドルの皮を被った、愛嬌のあるアーティスト、千賀の冒険はまだまだ続く。1 of 2
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千賀健永(せんが けんと)
1991年3月23日生まれ 愛知県出身。
Kis-My-Ft2のメンバーとして音楽、テレビで活躍。アイドルとして歌、ダンスはもちろん、バラエティー番組で多彩な才能を発揮。一方で、個人のライフワークとして取り組んでいるのが“アート”。iPadを使ったデジタルアート(絵画)や、スニーカーのリメイク、材料を集めて1からの製作など、“手”や“指”を使った創作活動を精力的に挑戦している。製作手法はデジタル、手描きドローイング、スニーカーをはじめとする立体造形物など多岐にわたり、貪欲な姿勢で創作に励んでいる。様々なジャンルのアートにアンテナを張り、ファッション、ストリートカルチャーの造詣を深めながら、プライベートではシーンを代表するファッション・デザイナー NIGO氏や、独自の世界観で世界中にファンを持つ現代アーティスト SHUN SUDO氏などとも交流を深めている。
千賀健永展 “FiNGAiSM”
会期:5月19日(金)~6月4日(日)まで
開館時間:11:30-20:00(時間指定入場制/最終入場19:00)
会場:表参道ヒルズ スペース オー
住所:東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ 本館B3F
チケット:2,200円(税込)
※公式サイト・チケット販売:https://fingaism.jp
※公式SNS:@finga_0323(Instagram / Twitter)