【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2022年3月を振り返る
長く続いたまん延防止等重点措置が3月21日を持って全国的に解除されました。これによってまた飲食業界が活気付くと良いですね。個人的な話ですが仕事が終わった時点で20時や21時となると、開いているお店が少なくて本当に苦労しました。レトルトカレーやコンビニカレーでしのいだ日も少なからずありましたが、やはり頑張って仕事をした後には人が作ってくれたカレーを食べたいものですから、とりあえずのまん防解除に胸をなで下ろしています。今月のカレーとスパイスは、限られた時間の中で食べに行ったお店4つのご紹介。
上板橋で生まれ変わったスパイスカレーとラーメンのお店。神楽坂でいただく流浪の超個性派名店のアーティスティックなスパイス料理。間借りから独立したスリランカ料理プラスアルファの新店舗。町洋食の名店出身ネパール人シェフが腕を振るうお気に入りのお店。
以上です。どのお店も僕が何度も通う大好きなお店ばかり。気になるお店があれば是非行ってみてください。
【第1週のカレーとスパイス】まるで食の天国! カレーとラーメンがW主役の新店が誕生「天国麺飯」
日本人が好きな食べ物は何かAIで分析した結果、1位がラーメン、2位がカレーとなったという記事を読んだことがあります。それが本当に正しいのかどうかはさておき、いずれにせよラーメンとカレーは人気の上位に入ってくる食べ物であることは間違いありません。実際この二つを同時に食べられるお店も少なくないですよね。ラーメン専門店がサイドメニューとしてカレーを出すことはしばしばありますし、ラーメンとカレーとどちらも看板メニューにしているお店もあります。しかしカレー専門店がラーメンを出しているとなると極端に少なくなります。
今回ご紹介するのは元々カレー専門店だったお店がラーメンも手がけているという以上に、ラーメンとカレーをどちらも看板メニューにしてリニューアルした「天国麺飯」です。
歴史を簡単に辿ると、元々ここは「ギュービッグ」という焼肉専門店でした。それが同じ建物の2階の広い場所に移転し、空いた1階は「ハングリーヘブン」というグルメバーガーのお店にリニューアル。こちらも人気が出て駅前へ移転。その後空いた場所には「最高おにくセンター」という肉バルが入ったのですが、これがコロナ禍でバル営業ができなくなり、ランチタイムにカレーを始めました。そこでカレーに開眼したシェフがカレー専門店としてリニューアルさせたのが、以前の連載「今週のカレー」でも紹介した「スパイスフォース」。行列のできる人気店となりましたが、シェフが体調を崩してしまい閉店。その後「辛麺サソリ」という辛口まぜそばのお店としてリニューアルしたのですが、こちらがさらにパワーアップした形のリニューアルで今の天国麺飯に生まれ変わったのが2022年1月のこと。
ちなみに今出てきたすべてのお店はGBWという同じ会社による運営となり、ハングリーヘブンを立ち上げたシェフと、スパイスフォースでカレーを生み出したシェフ、そして辛麺サソリで麺を手がけ始め、天国麺飯で腕を振るうシェフは同一人物なのです。紆余曲折あるお店ですが、だからこその今のスタイルと言えるでしょう。
まずは二枚看板のひとつである「天国 カレーライス」900円をいただきました。こちら、ラーメンスープも使用したオリジナルのスパイスカレーにチャーシューや味玉が加わり、さらにキムチがのるのは肉バル時代の名残であり、最も注目してほしいのがコーンビーフカレーものっているところ。
このコーンビーフカレー、僕がコロナ禍の中で生まれたカレーとして最も気に入ったカレーなのです。手作業でほぐすという手間暇かけまくった自家製コンビーフをカレーに仕立てたもの。肉のうま味が凝縮されているのがカレーのスパイスによってさらに増幅されていて、とにかく感動的なおいしさなのです。
スパイスフォースからサソリにリニューアルした際もカレーまぜそばはありましたが、コーンビーフカレーはありませんでした。それがここで復活したのです。めちゃめちゃうれしい!
メインのカレーも以前より奥深さとほのかな苦味がおいしさにつながっていてさらに個性的なものとなっていました。夢中になって平らげるとシェフが「実は3月からカレーラー麺も出そうと思ってるんですよ」と。「めちゃめちゃ食べたい!」と伝えると「実は今日もできるんです。作りましょうか?」と言ってくださったので、カレーライスを食べた後にもかかわらず頼んでしまいました。
これがまた最高においしかった!「カレーラー麺」1,100円(予価)は海老塩を使ったラーメンスープにカレースパイスが加わり、札幌の海老だしスープカレー的な味わいのしっかりと海老を感じるカレーラーメンです。カレーラーメンにも色々ありますが、このスタイルと味はカレー専門店だったからこそのクオリティ。とんでもなくおいしいです。しかもこのカレーラーメンにもコーンビーフカレーがのっているんですよ! これを少しずつスープに溶かしながら食べていくと、海老のうま味に牛肉のうま味も加わって幸せ度合いが増幅します。凄い!
ラーメンとカレーライス、どちらも力を入れているからこそ店名に麺と飯がつくわけですが、その気合と熱意が確かに味に表れていました。カレーライスを食べた後にもかかわらず、カレーラーメンもペロリと食べてしまえる程のおいしさ。逆だったとしても同様でしょう。そこまで食べられないよと言う方にはミニカレーライスもありますのでご心配なく。麺も飯もどちらも是非食べてほしいお店です。
天国にいるかのような心地にさせてくれる麺と飯を味わえる「天国麺飯」。要チェックです!天国麺飯住所東京都板橋区上板橋3-5-1 サンハイツ上板ビル 1FTEL03-6906-4529https://tabelog.com/tabelog_magazine/blogparts_hozon_button?rcd=13267891
【第2週のカレーとスパイス】真似のできない味がここにある。唯一無二のおいしさに出合える、流浪のカレー店「TAPIR (タピ)」
ここ数年で全国的にカレーのお店が急増しています。おいしいお店も確かに増えたのですが、おいしいだけで面白さには欠けるというお店も少なからずあります。どういうことかというと、どこかのお店の味やスタイルに似ていて個性がないのです。どこかのインスパイアでも元のお店を超えているか独自の工夫があるなら良いのですが、多くの場合はただの真似で終わっていて元を超えているということはなく、もっと個性があったら良いのにと思うのです。
では個性あるお店とはどのようなお店なのか。僕がよく地方のカレー好きの方から「東京じゃないと味わえないカレーってありますか?」と聞かれたとき、いくつか挙げるお店のひとつに確実に入る、神楽坂「タピ」を今週はご紹介しましょう。唯一無二の存在なのです。
タピはかつて大久保にあった知る人ぞ知る人気店。その後要町で間借り営業をして、今は神楽坂でご自分のお店を構えているというのは知られている所なのですが、実は大久保でお店を構える前から東中野や新井薬師などでも営業していたり、要町の後には浅草橋で間借り営業をしていたりと、とにかく流浪のお店。「引っ越しが好きなんですよ」とタピ店主の岡野さんは笑顔で語ってくれました。
間借りも経験したものの、やはり自分のお店を構えた方が良いと友人にも勧められ、今の場所を見つけたということでした。
タピのメニューは基本的に週替わりのワンメニュー。レギュラーメニューはありませんが季節感のある様々な料理をいただけます。毎回カレーがあるとも限らないのですが、スパイスを使った料理であることにブレはありません。
この日のメニューは「チキンコフタカレー」と「マトンカレー」。「2種」1,800円をご飯少なめ(-50円)でいただきました。
コフタとはわかりやすく言えば肉団子のこと。チキンの肉団子なのですが、しっかりと合わせられていて挽肉団子というよりはチキンの塊肉を食べているような感覚になります。それでいてスプーンを入れると簡単に切り分けられることから、やはりコフタなのかと確認できるような。まろやかなスパイス使いで鶏肉のうま味を堪能できる絶品カレーです。
一方マトンカレーはストレートに現地感のあるテイスト。実は岡野さん、バングラデシュに1年ほど住んでいたそう。その際に自然と身についたという現地料理がベースになっています。バングラデシュのカレーと言えば毎日食べても飽きないような滋味深いおいしさという印象を僕は持っているのですが、このマトンもバングラ感のあるじわじわとおいしいカレーでした。
副菜もおからを使ったスープや、おからブレッドなど個性的でヘルシー。これがまたこのカレーと合うんですよ。
食後に「ブランデーキャロットケーキ」450円もいただきました。
タピは食後にお茶がつくのですが「おいしいマドラーをどうぞ」とお菓子のような食べられるマドラーをひとつ一緒に出してくれます。
これで混ぜて飲むミルクティーがタピの個性的世界観を締めくくってくれるのですが、今回はケーキも一緒。出てきたケーキの盛り付けがまず意表をつかれるものだったのですが、程よく酸味のあるクリームと細かくカットされたケーキやナッツを一緒に食べると、それぞれのおいしさが見事に融合。満足度が加速して増幅しました。
さらにこの日はカレーパンもあったので「ししゃもカレーパン」300円と「サツマイモカレーパン」300円もテイクアウト。帰宅してから食べました。
ししゃも、さつまいもと、普通はカレーパンの具材としては思いつかない意表をついたものなのですが、ししゃもは一匹そのままカレーをまとい、さつまいもはインド料理のサモサのように芋自体がスパイスで味付けされており、カレー自体の仕込みも違うこだわりように驚きました。いつだって想像の斜め上を行くお店なのです。
メニューにカレーが無い日でも、例えばパスタの日にトッピングでカレーがあったりもしますし、またそのパスタが独創的で他には無いものだったりします。あるいは豆料理の日にはワダというインド料理の豆で作る甘くないドーナツがあったりして、このワダがとんでもなくおいしかったり。
何にせよおいしいことに間違いありません。大久保時代から今に至るまで、行けば確実に満足させてくれるお店なのです。個性ってこういうことだよなといつも感心します。
この個性はどこから来るかというと、岡野さんがアーティストであることも大きいのでしょう。元々は絵画の世界で創作活動をし、現在は漆の食器を製作しているそうです。実はお店で出される箸やスプーンも岡野さんの自作。「ゆくゆくはすべて自分の作った器で出したいんです」と。素晴らしいですね。
味はもちろん、内装から器にまで個性を感じるお店。日本全国、いや、世界中探してもここに似たお店はありませんし、ここを真似しようと思ってもできるものではないでしょう。同じようなカレーが増えてきてつまらないなと感じている方、是非食べに行ってみてください。
営業はお店のSNSをご参照ください。土日は朝から営業していたりもするので、最高の朝カレーから週末をスタートさせるのもおすすめですよ!TAPIR住所東京都新宿区神楽坂5-26 カグラザカ5ビル 2FTEL不明の為情報お待ちしておりますhttps://tabelog.com/tabelog_magazine/blogparts_hozon_button?rcd=13256548
【第3週のカレーとスパイス】スリランカカレーと異国文化も堪能。人気間借り店が一軒家カレー店として独立!「AJICO Salon」
スリランカ人シェフの間借りカレー店として高田馬場で人気を博した「AJICOカレー」が小石川に移転し独立。店名も「AJICO Salon」となり、ちょっと面白い形のお店に生まれ変わりました。
何がどう面白いのかというとまず場所。路地裏の文字通り隠れ家的な場所であり、かなりわかりにくいです。向かう途中から貼り紙があり、それを頼りに行けば何とかたどり着くのですが、それがなかったら見つからないのではと思うような場所です。
そしてその見つけた場所がまた面白い。民家なのです。靴を脱いでお邪魔しますという雰囲気で入ります。さらに面白いのが2階が「スルタン」というインテリア、トルコ雑貨のお店となっているということ。
こちらはAJICO Salonのシェフ、通称アジコさんがアートディレクターを務めているそうです。そもそも実は元を辿るとアジコさんとホールを切り盛りする店主の原さんはこのスルタンの運営が本業。SNSで料理の写真を載せていたところ、食べたいという声が多く上がり、ホームパーティやイベントをしていく中で常設のカフェもやりたいということになり、まずは曜日限定の間借りでスタート。それが好評となり常連もついたことから本格的に営業できる場所を探し、遂に見つけたのが現在のお店。一軒家だったので2階にスルタンも移し、同じ場所で一緒にやることにしたという話。
民家の居間のような場所でいただいたのは「AJICOプレート」1,200円と「サバサラダ」800円。
サラダは鯖にアーリーレッド(赤玉ねぎ)やトマト、パクチーなどを合わせたもの。アーリーレッドは普通の玉ねぎより辛味が少なく甘味がしっかりとしているので、生食にも適しています。これにブラックペッパーやピンクペッパーも加わり、程よいスパイス感も加わって良い前菜となりました。
メインのAJICOプレートはパリプーというまろやかなスリランカの豆カレーがご飯の周りを埋め、手羽元使用のスパイシーなスリランカチキンカレーがご飯の上にドンとのり、ゆで卵やポルサンボルというスリランカのふりかけ的なものが添えられたワンプレート。
基本はあくまでオーセンティックなスリランカ料理なのですが、こちらにもピンクペッパーがあしらわれていたりする所は、今の日本のカレーシーンのトレンド的な要素も感じます。スリランカ人が日本的感覚を取り入れて自由にアレンジしたスリランカカレーと言えるでしょう。
味わい的にも塩気的にも、本格的なスリランカレストランで食べるガツンとしたものではなく、優しく柔らかみがあるのです。しかも高田馬場時代よりおいしさに磨きがかかっており、良い意味で日本人受けしそうな方向に進化していると感じました。これは地域の人にも受け入れられそうだなと思って聞いてみると、既にご近所の方からも喜ばれているんだとか。素晴らしいですね。
とはいえまだ諸々準備しながらの営業であり、取材時は整っていない部分もあったのですが、今後はスリランカ料理のカフェバー、雑貨屋、料理教室、シンハラ語のスクール、ギャラリー等、様々な形での営業をしていきたいということでした。料理のみならず雑貨や言葉、アートを通して異国文化に触れるというのは非常に楽しい体験です。それを一度に体感できるお店はそうそうありません。
今後ますます進化していくであろうAJICO Salon。楽しみです。AJICO Salon住所東京都文京区小石川3-26-10TEL090-7238-1152https://tabelog.com/tabelog_magazine/blogparts_hozon_button?rcd=13269419
【第4週のカレーとスパイス】洋食と味噌汁の組み合わせにほっこり。インド・ネパール・日本のいいとこどりな町洋食「洋飲食」
町中華という言葉は既にかなり認知されて使われており、最近では町洋食という言葉も聞くようになりました。どちらも本格的な料理ではなく、町中華なら中国料理が、町洋食ならフレンチやイタリアンが、それぞれ日本人の好みに合うようにローカライズされて独自の進化を遂げた料理のことです。
インド料理の世界で町印度という言葉を作るなら、きっとそれは「インネパ」と呼ばれるお店のこととなるでしょう。インネパとはインドネパールの略で、ネパール人によるインド風料理とその他アジア料理のお店のこと。日本にある多くのインド料理店(に見えるお店)は、実は高確率でこのインネパに当たります。インド料理マニアからは敬遠されることも多いインネパですが、ネパール人シェフは柔軟で器用な方が多く、だからこそお店それぞれのオリジナル料理もあってそれが楽しく、個人的には好きな形態です。
今回ご紹介するのは町洋食のお店なのですが、その魂は町印度とも言えるお店。水道橋駅近くにある、その名も「洋飲食」です。
階段を上って2階にあるお店。店内はネパール人男性2人で切り盛りしています。シェフは町洋食の名店である新橋「むさしや」出身。8年間勤めたそうで、むさしやでインド風カレーがメニューに加わったのもこちらのシェフの力によるところが大きいのでしょう。そのシェフの幼馴染みが主に接客担当。兄弟のような関係性だそうです。メニューはむさしやと同じようにオムライス、カレー、スパゲッティの三本柱。
看板メニューのオムライスは中身がチキンライスのものもありますし、中身がドライカレーである「オムドライカレー」900円もあります。
しっとりとしたドライカレーをふんわりとした卵が包みます。バターの香りも良く、卵の量もむさしやより多いのではないでしょうか。ナポリタンや味噌汁がつくのも町洋食ならではの魅力。
カレーはチキンカレーとキーマカレーがありますが、今回は「キーマ茄子カレー」1,000円に「ミニハンバーグ」250円と「目玉焼き」100円をトッピング。キーマカレーにも色々ありますが、こちらのキーマは挽肉の割合がとても高く、スパイスで味付けした挽肉をそのまま味わっていると思えるほど。町印度的キーマが基本なのですが、それともちょっと違うのは洋食のエッセンスが加わっているからでしょうか。
これにハンバーグを加えるとさらに少し洋食のカレーに寄ります。ハンバーグは懐かしいテイストのデミソースをまとっているので、それごとカレーに入れると深みが出るのです。さらに卓上のブラックペッパーをかけて食べるのが僕のおすすめ。他にありそうでない、個性あるおいしさのキーマとなります。
これだけで十分ガッツリと満足できる一皿なのですが、食いしん坊の方にはメガ盛りメニューもあるのが楽しいです。
朝10時半から営業しているというのも特筆すべき点。朝と昼兼用でガッツリ食べたいときにぴったりです。カウンター席のみなので誰かとゆっくり食べるというより、一人でガッツリ食べてすぐに出るというのが合うお店。通って飽きの来ないちょうど良いおいしさと、千円前後で食べられるお手軽さと、また行きたいと思える満足度。日本人の味覚にぴったりと合う洋食をネパール人が作っているという楽しいカオス。
時代の流行とはまるで違う立ち位置であり、本格的な現地料理が好きだという方には合わないお店かもしれませんが、町洋食が好きな方や、インドネパール系のお店が好きな方には確実に刺さるお店です。洋飲食住所東京都千代田区西神田2-8-12TEL03-6272-4156https://tabelog.com/tabelog_magazine/blogparts_hozon_button?rcd=13261190
※価格はすべて税込です。
※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。
※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
文・写真:カレーおじさん\(^o^)/