昨今の爆発的なスニーカー人気により、はなから定価での購入を諦めリセールサイトを覗きに行く人は少なくないだろう。そんな方々にはおなじみのオンラインマーケットプレイス『StockX(ストックX)』より、2021年に同サイトで取り引きされた高額スニーカー Top 10のデータが届いたのでご紹介したい。
Top 10のうち9モデルが2000年以降にリリースされているのも興味深いが、驚くべきは〈Nike(ナイキ)〉および〈Jordan Brand(ジョーダン ブランド)〉が独占している点だろう。ここ数年、スニーカーマーケットの勢力図は両社の2人勝ち(1人勝ち)が続いており、それがそのまま反映される形に。また、Dunkシリーズのリリースに力を入れていることもあって人気が再燃しているが、Top 3にはその影響がまざまざと現れている。2021年のスニーカーシーンをプレイバックする意味も含め、往年の名作から技術の粋を結集した“あの”モデルまでが登場するTop 10をご覧あれ。
Air Jordan 1 Retro “Dave White Wings For the Future Gold”
18,888ドル(約214万円)
©stockx
ランキングの最初を飾るのは、イングランド出身のペインティング・アーティスト Dave White(デイブ・ホワイト)と〈Jordan Brand〉によって2011年に生み出されたコラボ Air Jordan 1 Retro “Dave White Wings For the Future Gold”だ。アッパーにアメリカ国旗が大胆に落とし込まれている本モデルは、Michael Jordan(マイケル・ジョーダン)の背番号と同じ数の23足のみが制作。バスケットボールでの成功を夢見る若者の支援を目的とするプログラム “Wings For The Future”に充てることを目的に、全足まとめてチャリティオークションにかけられたところ2万3,000ドル(1足1,000ドル)で落札されたのだが、今回の取引額を見れば当時がいかに破格だったかが分かるだろう。
Nike MAG “Back to the Future”(2016)
19,499ドル(約220万円)
Nike
9位には、1989年に公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(原題:Back to the Future Part II)』で主人公マーティ・マクフライが未来の靴として着用していたスニーカー Nike MAG “Back to the Future”がランクイン。レジェンドデザイナー Tinker Hatfield(ティンカー・ハットフィールド)が手掛け、足を通すだけでシューレースが自動でフィットする“机上のスニーカー”として作中に登場したのだが、〈Nike〉はまさかの実現のため開発に着手。自動レーシングシステムが搭載されていないレプリカモデルなどを経て、映画公開から27年が経った2016年、自動で靴ひもを調整するシステム “Power Laces”を搭載した本モデルが発売されたのだ。しかし、用意されたのは映画が公開された1989年にちなんだ89足のみ(US7=11足、US9=22足、US11=33足、US13=18足)。そのうち4足がパーキンソン病の研究のための寄付を目的にオークションにかけられ、1足20万ドル(約2,150万円)という驚きの価格で落札されている。
Air Jordan 1 OG “Chicago”(1985)
20,000ドル(約226万円)
©stockx
本ランキングではTop 10のうち9モデルが2000年以降にリリースされたモデルなのだが、唯一の20世紀組がご存知 Air Jordan 1 OG “Chicago”だ。AJ1 “Chicago”は1985年に誕生して以降、1994年、2013年、2015年と3度の復刻を果たしており、そのたびに争奪戦が勃発。そして、愛好家たちの間で盛んに意見交換が行われるが、結局のところ「やっぱり1985年だよな」とオリジナルに落ち着くのである。しかし、発売から35年以上も経っているためデッドストックなど無いに等しく、あったとしても経年劣化は避けられないもの(AJ1は加水分解しないと言われるが、実際はソール内部のAIRが崩壊していることが多い)。だが保存状態の良いものも存在し、今回落札されたのはそのうちの1足。ちなみに、当時の定価は65ドルだったので300倍以上の値が付いたことになる。
Air Jordan 3 Retro “DJ Khaled Father of Asahd”
20,008ドル(約226万円)
@djkhaled/Jordan Brand
世界的なDJ/プロデューサーであると同時に、世界屈指のスニーカーコレクターとしての顔も持つDJ Khaled(DJキャレド)。そんな彼が2019年に11thアルバム『Father of Asahd』をリリースした際、アルバムの購入者に抽選でプレゼントする目的で“Father of Asahd”と“Another One”というマテリアル違いの2足のAir Jordan 3が製作されたのだが、このうちの前者が7位に登場。同アルバムのアートワークでDJ Khaled本人が着用しているほか、彼は10thアルバム『Grateful』のリリース時にも同様の目的でコラボ AJ3 “Grateful”を製作していた。https://open.spotify.com/embed/album/1YgX8BWKleDlDeCOFklRfz?utm_source=generator
Air Jordan 11 Retro Premium “Derek Jeter”
23,000ドル(約260万円)
1 of 4
Stadium Goods2 of 4
Stadium Goods3 of 4
Stadium Goods4 of 4
Stadium Goods
6位には、ニューヨーク・ヤンキースひいてはMLBのレジェンド選手であるDerek Jeter(デレク・ジーター)と〈Jordan Brand〉によるコラボ Air Jordan 11 “Derek Jeter”がランクインした。2017年、約20年間ヤンキース一筋でプレーした“The Captain”が背負い続けた背番号 “2”が永久欠番となることを記念したセレモニーが開催され、その際に『Yankee Stadium(ヤンキー・スタジアム)』の目の前に期間限定でオープンしたポップアップショップにて5足のみが抽選販売。往年のベースボールファンにとってはたまらない1足としてこの順位に。2018年にはローカットモデルが一般販売されており、そちらは比較的安価で取り引きされている。
Air Jordan 4 Retro “Travis Scott Purple” Friends & Family
25,000ドル(約282万円)
Gabe Oshin
4位タイはラッパー Travis Scott(トラヴィス・スコット)と〈Jordan Brand〉によるコラボ Air Jordan 4のフレンズ & ファミリーモデル “Travis Scott Purple”だ。2018年にリリースされた鮮やかなブルーが美しい一般販売モデル “Cactus Jack”ことAJ4 “Travis Scott”のいわゆる色違いで、F&Fモデルとしてはかなりの量である1,000足が用意されたと言われている。そのため、NBAプレーヤー LeBron James(レブロン・ジェームズ)やP. J. Tucker(P・J・タッカー)、ラッパー Sheck Wes(シェック・ウェス)、DJのChase B(チェイス・B)など、着用者の目撃情報は多い。
Air Jordan 4 Retro “Travis Scott Olive” Sample
25,000ドル(約282万円)
1 of 2
Wneloy2 of 2
Wneloy
4位タイはまさかのどちらもAJ4 “Travis Scott”で、こちらはF&Fモデルですらないサンプルモデル。2018年にTravis本人が着用する姿が確認されていたものの結局お蔵入りとなった幻の1足で、なぜ『StockX』に出品されているかは謎である……。
Nike SB Dunk Low “Freddy Krueger”
30,000ドル(約340万円)
©stockx
2007年に〈Nike SB(ナイキ SB)〉から登場したインラインモデル Dunk Low “Freddy Krueger”が3位にランクイン。その名の通り、1984年に公開されたホラー映画の金字塔『エルム街の悪夢(原題:A Nightmare on Elm Street)』に登場する殺人鬼 Freddy Krueger(フレディ・クルーガー)が着想源で、Freddyが着用しているグリーン/レッドのストライプ柄をアンダーレイヤーに落とし込み、オーバーレイヤーには血飛沫をプリント。そして、サイドのスウッシュは彼の右手にはめられた鉄の鉤爪を彷彿とさせるシルバーに染め上げられ、インソールに焼けただれた皮膚のグラフィックがプリントされていたりと、リーク段階から非常にデザイン性の高い1足として注目を集めていたのだが、直前でまさかの販売中止に。少量が市場に出回ることになったものの、再販の噂が全く立たないことからインラインモデルとしては異例の高額で取り引きされている。
Nike SB Dunk Low “Yellow Lobster” Friends & Family
30,453ドル(約345万円)
©stockx
惜しくも(?)2位だったのは、米マサセッチューセッツ州ケンブリッジに店を構えるセレクトショップ『Concepts(コンセプツ)』と〈Nike SB〉から2009年にリリースされたDunk Low “Yellow Lobster”。『Concepts』が拠点とするケンブリッジやボストン近郊は、ロブスターをはじめとするシーフードが名物ということで、その地元愛からロブスターをモチーフとしたコラボモデルを幾つも発表している両者。その中でも本作は関係者にのみ配布されたF&Fモデルで、アッパーのオーバーレイに施されたロブスターを想起させる斑点模様や、ロブスターの身をイメージしたレッド/ホワイトのライナーが目を引く。なお、トゥ先に配された謎のゴムバンドは、ロブスターが水揚げされるとすぐにゴムバンドで鋏脚を固定されることに着想している。
Nike SB Dunk Low “Staple NYC Pigeon”
33,400ドル(約380万円)
©stockx
堂々の1位となったのは、〈Staple Design(ステイプルデザイン)〉とショップ『ReedSpace』でクリエイティブ・ディレクターを務めるJeff Staple(ジェフ・ステイプル)が手掛けた〈Nike SB〉とのDunk Low “Staple NYC Pigeon”だ。Jeff Stapleと〈Nike〉は継続的にコラボしているが、本モデルはその初代として2005年に誕生し、ニューヨークのスニーカーカルチャーに大きな影響を与えたと言われている伝説的な1足。ヒール横に配されたニューヨークおよび平和の象徴である鳩の刺繍がポイントで、202足限定という希少性からリリース時に暴動が起きてしまったことでも知られ(結果的に150足程度しか販売されたなかったとの噂)、2019年にはその暴動を取り扱った新聞記事をデザインとしてアウトソールに落とし込んだDunk Low “Panda Pigeon”なるモデルが製作されている。ちなみに4年前の平均取引額は7,000ドル程度だった。